三鷹文化センター 書道アート展 Shodo Art Next17 へ
三鷹文化センター
書道アート展 Shodo Art Next17
パワフルで多彩な書道アートを、とても身近に堪能できる展覧会でした。
友人が出展されているSHODO(書道) ART 展に、ご厚意により駆け込みで、というより遅れて乗り込みました。
白と黒だけで描き出された作品の並ぶ会場は、とてもシンプルで美しい世界。
油絵の、嗅ぎ慣れた癖のある独特な香りと全く違う、墨と紙の透明な香りが会場を満たしています。
いつもお世話になっておる書道アーティストのKaida Satoruさんの作品が、もっぱらのお目当てです。
広いメインの展示室の入ってすぐのところにて、さっそく拝見することが出来ました。
作品名は、タイトル 「still(未だ〜)」
好みの作品に出合うと、タイトルを推測して画家の想像に肉薄しようといつも試みますが、いつも通り全く予想を外されました。
恐らくは静物(Still)とかけているであろう、画題。
何がどうStillなのか、しばらく眺めてみてみます。
書かれているのは、主に点と線。
具体的なオブジェではなく、象徴的な記号や何かのように見えます。
或いは何かを抽象的に書いたものなのか。
伺うと、とある意味の言葉を表すモールス信号の点と線、とのこと。
ここで再考。Stillとは、何に対するStillなのか。
それは、言葉が意味を持つ以前の、いわば裸のままの記号の状態、のことではないだろうか。
言葉に未だならない、余計な意味を持たない点と線。
その存在が意味に依拠しないが故の、自由と美しさ。
これが、今回最も気に言った作品です。
細かい談義は、また別の機会に。
書道アートは、そもそも何なのか。
参考までにWikipedia 、では下記のように説明されています。
なお、下記ページ自体は「デザイン書道」という項目で、作家さんが書かれている抽象表現とは違う観点ですが、「アート書道」という記述があります。
貼り付け元 <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%9B%B8%E9%81%93>
解釈は分かれるところですが、かなり手広く書道自体との関係性という観点からいうと、下記のような言い方が出来るかもしれません。
●書道のルールをあえて逸脱し、美しさや面白さを追求したもの、といった意味でしょうか。
●文字の意味には囚われずに、文字の形だけを抽出し変容させ、抽象表現に用いたもの
書道では、基本的には「意味」を持つ文字が規則に則って描かれます。
もちろん文字の美しさも探究の対象ですが、その美しさは規則と意味があってのものです。
それらをあえて逸脱した表現を追い求めたものが、書道アートであると、此処では定義しておきます。
その辺りは、最終的には作品や作家さんそれぞれの考え方によるのでしょう。
会場内には、他にも多くの個性的な作品と出会えました。
こんなかわいらしい作品も。
これは、書道ではないなw
作家さんご本人と、対談
このような展覧会では(これは個展ではありませんが)、作家さんと直接作品を見ながらお話ができるもの、魅力の一つです。
ご本人とお会いするのは一年以上ぶりで、作品を目の前にして、創作の意図や最近の創作に至る経緯など、色々と直接お話を伺えたのも、非常に興味深かったです。
ただ作品と向き合うのもいいのですが、作家さんと向き合うことで作品の解釈もここまで広がるものかと驚かさせれます。
Kaidaさんの作品は数年来鑑賞させていただいておりますが、作風がここ最近大きく移り変わり、その遍歴が非常に興味深いです。
また改めてご紹介しようと思いますが、色彩も筆致も、どんどんシンプルに、抽象的になってきています。
これからどんな表現を探求していかれるのかが、楽しみでもあります。
余談ながら、三鷹のアクセスの良さと街並みの綺麗さにも驚き。こんな街に住みたい。
本展覧会は今日までです。
また近々、お目にかかれる日が来ることを、待ちわびつつ。
*1:書道を親しみやすく変形させたものや、書道の定義からずれたものは全てアート書道と呼んでいる。アート書道は、古典に則った芸術性から離れ、正しい字形や筆法などを無視し、ひたすら自由な書という意味が込められ、いわゆる芸術の「書」・「書道」からは一線を画している。「へたうま」などの文字はアート書道に分類される。パフォーマンスを伴ったり、文字で遊ぼうという企画などは、特にレクリエーション書道とも呼ぶ。