香月泰男美術館へ
2019年、山口に来て以来ずっと行きたかった美術館、香月泰男美術館へ
出会ってからこれまで見たシベリアシリーズの香月とは全く違う、明るく穏やかな作品群。
これが普段の画家の素顔であったのかと、安心させられる。
しかし、ただ明るく牧歌的であるだけでなく、ただ写実的であるだけでなく対象物の内面まで抉り出すような豊かな表現力はもちろんのこと、自然や存在の厳しい本質を射抜くような鋭い観察眼、世界観もそこかしこにみられた。
特に花を描いた掛け軸と、数枚の油彩画。
掛け軸の方は、葉の筋と花弁だけが色鮮やかに彩色され他の部位(葉と背景)が緞帳のように暗色で抑えらえ、その対比からまるで美しい花弁にだけ光が当たっているような印象を受ける。
また、油彩画は色彩面で同様の視覚効果を持っていることはもちろん、水彩画の掛け軸とはまた違い肉厚な花弁がなんともリアルな生命観を醸し出している。
恐らくは故郷の三郷であろうか、冬景色(雪山や凍る川)を描いた一連の作品も素晴らしかった。
故郷への愛着と暖かい眼差しを感じさせるような明るい色使い。
一方、冬の河を描いた一作だけは、非常に厳しい色彩だった。
再度シベリアシリーズを思うが、あの暗調な色彩は見られたり見られなかったり、傾向に幅がある。
特に春の山と冬の河を描いた作品のギャップは非常に大きく、なぜだろうと訝しんだ。
季節や空気感に非常に鋭く忠実に描いていたのであろうか。