日々雑感

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備忘 クラーナハ展 @国立国際美術館

 

国立国際美術館 クラーナハ

この名前を知っている人は、少ないであろう。私も今回初めて観、知った。

教科書に出てくるルターの肖像を描いた人、と言われればピンとくる人がかなり増えるのでは。17世紀ドイツ北方ルネサンスの画家である。

 

風土や文化が影響してか、イタリアのそれとは似ても似つかない陰鬱な感じがまた独特である。

和辻の『風土』という本があるが、人間の住む環境が、芸術のような表現行為に与える影響の強さを、これらの絵画の色彩から感じることが出来る。

 

クラーナハの表現力

特に女性の人間描写が、凄い。

何観てんだと鑑賞者の本性を逆に抉り返すような眼つき、表情。

身体描写はマニエリスムを思わせる不自然でいてどこか妖艶な曲線を多用する。

この画家は人(女)をいつもこんな風に観ていたのか。

家庭や職場ではさぞかし疲れたであろうに(笑)

特に聖書や神話の場面を俗人的心理描写を持って描いた名作が数多くある。

宗教改革と反改革の嵐吹き荒ぶ時代に、よくこんな人間臭いものを描けたものだと、心底感服する。

細かい技巧は分からないが、制作へのよほど強い意欲とどうにもならない感性がそうさせたのであろうか。

彼が描こうとしたものは、何であったのだろうか。それは一言で表せば、人間の真の姿ではないだろうか。

当時の宗教画においては、宗教的場面、神話的場面を題材として、人間を理想的に描くのが普通であった。人間は神の化身のように扱われ、神々しい表情や

 

 

以下、拝観前

日曜美術館視聴(TV)

クラーナハ展に行こうと思っている(実際にいった鑑賞の2週間前)

クラナーハの美、特に女性に対するこだわりと強い美意識、耽美的ともいえる鋭敏な美意識を感じ取ることが出来た。

ヴィーナス

どこか怖い。表情が明らかに、悪い。

ユディット 

敵将の首を刈り取る瞬間のユディットが、妖艶に描かれている。

 暴力的シーンとしての激しさはなく、寧ろ神秘的とすら移る美をたたえている。そして殺される男の表情は、光悦としてどこか「まんざらでもない」感じがある。

 恐らくこれは、画家の女性の力に対するあこがれ、被支配願望を表したものではないか。表面的には男は支配願望を持っており、女性を手なずけひれ伏させようと思っている。しかし、自己の力を超越した美への憧れと、そんなものがもしあるならいっそのこと篭絡され、ひれ伏してしまいたいという被虐的な願望があるのではないか。

 それは、彼のテーマである「女の力」にも通じるものだ。自己否定としての被虐ではなく、純粋な美の追求、快楽の追求の結果としての態度。そんな画家の内面を吐露し、かつ鑑賞者に問いかけるのが、この作品の狙いといえるのではないか。