晩秋の根津 「川上不白生誕300年 江戸の茶の湯展」へ
今週も根津。
秋も深まり、もう年の瀬を予感させる季節になってきました。
移ろう環境の中で作品と向き合えるのが、根津の大きな魅力です。
今回の展覧会は、これ。
展覧会は、江戸の茶道と題し、江戸時代において千家流の茶道を広めて不白流の開祖となる川上不白の道具や書道、絵画などを特集する展覧会。
武家流(不昧流)に属する私からすると、全く異なる、というかある意味対極に属する流派、になるのか。
ただ、流派は問わず、茶道の広さと奥深さとを知るには十分な内容の展覧会であった。
不白は基本的には茶の道を究めていた茶匠なのであるが、書画にも深い造詣を持ち合わせ、盛んに創作活動を行っていた様子がうかがえる。
書の達筆さは言うに及ばず。描いた画の無駄のない美しさは刮目すべきものであった。
全ての作品に共通するのは洗練された構成と、無駄のない表現力。
茶道は様々な所作を徹底的に様式化して洗練することが求められるのだが、そこで鍛えられた思索と美意識がにじみ出ている。
茶道では必ず、花を飾り、掛け軸をかける。茶会ではそれらを愛で、語りつくすことが求められる。
なぜそうするかといえば、茶をたてるという行為に共通するものがあるから、なのかもしれない。
写真が撮れないのが残念であるが。
茶器にもそれぞれの美しさがある。
考えてみると不思議なことであるが、なぜ人は、道具を眺めだすのだろうか。
本来ただ使っていたもの、機能を求めていたものを、何かの時点で使う手を止めて飾り、眺めだすのである。
機能性が、機能美に移り変わる瞬間。
そこに、人間の美的感性や知性の本質があるのではないか。
根津を訪れる目的は、展覧会も然ることながら、季節により移り変わるお庭を楽しむことでもあります。
もう12月の下旬ですが、思いのほか未だ青々としていて、好天と相まり実に心地よい。
今年は例年と比べてもあまり紅葉が進んでいないようにみえますが、冷え込みが緩いからなのでしょうか。
また来ます。
年を越したらもう少し静かな景観になるかな。
そのうちまた来年の杜若を待ちながら。